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LKM512
メイトー
協同乳業研究所

10/03
表彰&新部署

今日から10月、会社としては下期の本格スタートです。
本部で行われた下期スタートの式で、8月に発表した
「ビフィズス菌LKM512で寿命伸長効果」の論文の件で、表彰されました。
ありがとうございます。

一人でできる仕事はありませんので、
これまで支えてくれた上司や、
「出せ」と言えば気持ちよくウンコを提供してくれた研究所メンバー、
さらに部署を超越したLKM512プロジェクトメンバーにも、
この場を借りて御礼申し上げます。


更に、もう一つ。
10月よりビフィズス菌LKM512を専門に扱う部署が発足しました!
なんと私も兼務です。
一応、研究に集中すべきバリバリの研究員と自負しておりますので、
「まさか?」と思いましたが、辞令が出ておりました。
とはいえ、自分の研究しているものが商品になり、その販売戦略に直接関わることは、
普通の研究者はできないことですから、楽しんでやりたいと思います。

賞状と一緒に金一封も頂きました!
中身はまだ見ていません。
いくら包まれているのだろう?
期待していないが期待している私。

09/21
まじめ過ぎ?

昨日から大雨で被害を出し、
本日はいよいよ上陸し、一気に日本を縦断して行きそうな台風15号。

こちら関東地方でも、今朝の段階では断続的に強い雨が降っています。
予報を見ると、本日夕方に関東に最接近。
どのニュースでも普通に、
「帰る時間帯が一番危なく、交通機関も乱れるでしょう。」
と言っています。
なのに、皆さん、普通に出社しています。
既に交通網が乱れている沿線でも、迂回路を探し、果敢に会社に向かって進んでいきます。
アリジゴクの巣に自ら落ちていくようなものですよね?
ほぼ間違いなく生じる帰宅時の混乱のことをどのように考えているのでしょうかね?
「危ない、混乱する」とわかりながらも休めない多くのサラリーマン。
何か悲しい気分になります。

という私も迷わず出社。
但し、私は車通勤ですので、台風の進路を見極めながら、危なかったら通り過ぎた後に退社する予定ですが。

台風を気にしながらの仕事も効率悪いでしょうね。

そもそも他の国では、このような天候の時に危険を冒してまで出社するのでしょうか?
大学時代のインドネシアの留学生は大雪で研究室を休んで、
教授にこっぴどく叱られていました。
「なんで? 無理でしょ。」
と叱られた意味が理解できていなかったのを思い出します。
やはり、この勤勉さは日本人の国民性なのか?
この勤勉さを美徳とする文化があるのは間違いありません。 

これが美徳か否かの議論は置いておいて、
「今日は台風が通り過ぎるまで、堂々と飲めるなー」
というサラリーマンが大勢いて欲しい気分です。

09/13
ペースが上がってきました

排便回数のExcelデータを整理していると、
8月、いよいよ排便ペースが上がっていることに気付きました。

最近、急激にこのブログのファンの方が増えてきておりますので、念のため、新しい読者の方に説明しておきます。
私は、毎年ウンコ回数を正確にカウントし、
このブログの読者に、私の排便回数を公表しているのです! 
例えば、昨年の回数はこの通り!

今年の上半期を集計した時点では(発表!ウンコ回数2011年上半期)、
1日あたり1.3425回と年間500回以下のペースで進んでおりました。

ですが、8月は通算48回、
1日あたり1.548回とハイペースになっておりました。

夏休み、結構たくさん食べたからでしょうか?

詳細な計算は述べませんが、8ヶ月間の合計排便回数から、単純計算で1年間の排便回数を算出すると、
ついに、500回台の大台に乗ってきました。

んー、夢の年間排便回数512回へ、
食欲の秋がこれからであることを考えると、
イチローの200本安打より、可能性が高くなりましたかね。

09/05
春日野部屋訪問(前半)

研究所で働いている私は、色々な研究テーマを考えそれに邁進するのが仕事ですが、
全く異質のテーマを作りました。
このブログの読者の方にはお馴染みでしょうが、
「春日野部屋を応援してビフィズス菌LKM512の認知度を上げよう!」プロジェクトです。
(もちろん、勝手に命名しました。)
ということで、先週の金曜日、春日野部屋を公式訪問致しました。
公式訪問? つまり、仕事で訪問するということです。

朝8時頃の幕下格からの朝稽古がお奨めということで、5時台に起床して向かいました。
両国駅で降りて、「場所はこの辺りかな?」と歩いていると、
まわし姿の力士が何人も道に見えるではないですか?
「なんか、異様な空間。ちょっと怖い...」
間違いなく春日野部屋です。
20110905.JPG
マネージャーさんが出てきてくれました。
挨拶もそこらで、早速、中に入れて頂くのですが、その前に注意事項。

① 中は親方もいて緊迫して稽古をしているので、携帯はオフに(ちなみに私は持っていない)。
② 話は極力しないように。
③ 気が散るので、立ち上がって歩いたりしないように。

当たり前です。何しろ本場所間近の大事な稽古です。
個人的には便意をもよおしたらどうしようか心配になりましたが...。

玄関で、既に、体と体がぶつかり合う「バチッ、ゴツッ」という、
何とも表現できない音が聞こえてきます。

中に、そーっと入らせて頂きました。
社会人としては元気よく挨拶すべきなのでしょうが、謎の緊迫感があり、
声を出さない方が良いと判断しました。
と、いきなりオーラを出しているのは、元関脇栃乃和歌の春日野親方です。
普通の顔でも怖い(これは大相撲ファンなら共通の認識だと思います。
ご存じない方はインターネットで調べて下さい)のに、
弟子達を指導中ということで更にパワーアップです。

稽古場が1m先にある最前列(畳なので席ではありません)に座らせて頂きました。
ちょうど、稽古する手前の力士は背中側、相手の力士は顔が見える位置です。
1mもあるかないかの目の前には土俵を囲む力士の背中とお尻があります。
両者を横から見える正面の位置には親方達が陣取り、指導をしています。

幕下クラスの力士達が激しく稽古をやっていました。
それにしても激しい。
本場所は溜席で、数mの距離で見た時はその迫力に驚きましたが、稽古はそれ以上。
距離が近いということと、部屋という空間のため、音が大きいです。
何番も何番も、勝った力士が次の稽古相手を指名して、延々と繰り返されるのです。
時々、親方衆が指導するため中断しますが、延々と。
汗だく、土でドロドロなのですが、ちょっとタオルで拭くと、きれいな汗が噴き出してくるのです。
1つ1つの汗腺から、珠のような汗です。
サウナで耐えているオヤジのドロドロ汗とは質感が異なります。

ちょっと落ち着いてくると、
「あっ、あれは以前にブログに出てくれた栃矢鋪さんや」(大相撲技量審査場所というか...、タイトルはやっぱり「ついに力士登場!」参照
等わかってきました。

圧倒されっぱなしで1時間位経ったでしょうか。
親方の合図でぶつかり稽古が始まりました。
関取衆が順に胸を出し、幕下以下の力士がぶつかり、土俵の反対側まで押すのを繰り返し、
転がされては受け身をとる稽古ですが、これが更に激しい!
「ゼーゼー、ハーハー」

気が付けば、コーチ役(?)っぽい栃乃洋関をはじめ、栃煌山関、栃ノ心関、栃の若関、木村山関が勢揃い。
さらに、出稽古に来た、隠岐の海関、磋牙司関、碧山関もいるではないか!
碧山関を連れてきた田子ノ浦親方(元久島海)も。
そして、解説でお馴染みのあの親父まで登場するではないですか!!!

長くなったので、つづきは明日。

09/02
感動!! のびのびうんち棒

先日、ビフィズス菌LKM512の販売促進のためのプロジェクトチームの会議の後、
メンバーが寿命伸長論文の掲載と、
たくさん報道されたこと等の件で、
祝勝会を開いてくれました。

どうも、ありがとうございまーす。

で、プレゼントも頂きました。
これです。
2011090201 (1).JPG


購入する時大変だったようで、
電話で取り寄せてもらって、
以前プロジェクトメンバーだったマイさんが店に受け取りに行ってくれたようですが、
「予約していた"指し棒"」
と言っても通じず、「どんな棒ですか?」と聞かれ、
仕方なしに「先にうんちが付いている...」
と恥ずかしかったようです。
正式名称は"のびのびうんち棒"というものです。
しかも、「プレゼント用に包装して下さい」と頼むと店員に笑われる始末。
かなり辛かったようです。

有りがたく使わせていただきます。

ちなみに、この"のびのびうんち棒"は、先のウンコを取り外すと、
なんとボールペンになっているのです。

2011090201 (2).JPG

便利ですねー。
って、使うことあるのかな?

08/30
ほな、論文解説しますわ⑦ ―考察(凄いことは)―

今日でこのシリーズを終えたいと思います。

考察は最も大変で、最初に立てた仮説が正しかったのか?
この実験でわかったことは何なのか?
過去の近い研究データとの比較も必要ですし、
この研究ではわからなかった事や新たに生じた疑問も提示する必要があるでしょう。
今回のように、ポリアミンのような作用が多岐にわたっている物質が主役だと、その安全性についても熱く述べなくてはなりません。

これらを考察するために、実は補助する図や表がたくさん必要になります。
それがSupporting Informationというもので、Web上では見ることができます。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図をずーっと下の方に進んでもらえると、下4分の1位の位置にSUPPORTING INFORMATIONと書いた箇所が出てきて、その下にFigure S1, Figure S2・・・Table S1・・・とあります。
クリックしてもらえると、その図や表を見ることができます。
この論文だと、本題の図の他に補助の図が6つに表が3つあります。
これらを使って、考察していることが正しい可能性を示したり、他データとの比較を行ったりしているのです。
補助図6(Figure S6)なんて、わざわざこれだけのために実験していますから。
サポートのための図ですが、これを作るのに何日もかかることが多くて大変で、論文を熟読してくれる方以外には無視されているのでかわいそうな図表です。

さて、色々考察はしましたが、この研究の意義あるいは重要性のみ抜粋します。
第一に、重要なのは、
カロリー制限(ヒトでいう食事制限)なしで哺乳類の寿命が伸びることが確認された食品は、これまでレスベラトロール(赤ワインに含まれる成分)しかなく、これが2番目の食品であるということです。(ポリアミンの直接投与でも同様の成績があるのですが、ポリアミンを試薬の形で食べることは認められていない。)

その他には、
ポリアミンによる大腸の機能維持が、慢性炎症の抑制を誘導し、寿命を伸ばした可能性を示したことも意義があります。

「プロバイオティクスで寿命が伸びた」という事実も大事でしょうね。
何しろ、テレビや新聞では、この部分ばかりが取り上げられるのですから。
「他の大事なキーワード、特にポリアミン、についても書いてや!」
と思うのですが、気軽に、しかも安価で続けられるというのは特筆すべきことでしょう。
ヨーグルト不老長寿説というのが100年前に提唱されていながら、殆ど寿命に関する研究はなされていなかったわけですから。

プロバイオティクス投与で機能性の高い物質(ポリアミン)を大腸内で作らせて保健効果を得た点も大事です。
つまり、プロバイオティクスが直接作用するというより、腸内菌叢を介して産生物を作らせて、それに効果があるというアプローチです。
誰が何と言おうと、ポリアミンを大腸内で作らせるアプローチは我々の専売特許でして、10年以上前から挑戦し続けているものです。
こんな遠回りで証明が難しい無謀なチャレンジは、他の人にはなかなかできないことでしょう。

まだまだ書きたいことはありますが、ややこしくなりますので、
この論文の解説はこれ位にしたいと思います。

今回、マウスの寿命は伸び、報道もされ大騒ぎになりましたが、まだまだ満足していません。 
課題はまだまだあるのです。だから面白い。

あっ、そうや!
最後に、強く主張しておきますが、
寿命伸長効果が確認されたビフィズス菌はLKM512のみですから。
他の菌株ではそんな報告ありません。
便乗商品に騙されないで下さいね。

08/29
ほな、論文解説しますわ⑥ ―結果(大腸の遺伝子発現)―

LKM512を1年間与えたら、LKM512投与マウスと対照(LKM512を与えていない)マウスの大腸の遺伝子発現パターンが大きく異なったことは良くわかって頂けたと思います。

では、何が変動していたのか?
1つずつの遺伝子を比べていてもよくわかりません。
何しろ25,000個以上の遺伝子を調べておりますので。
しかも遺伝子の名前って、アルファベットと数字が殆どで、何に関連しているものかよくわからないのです。
DNAマイクロアレイ初体験の私は、
「絶対に良いデータやから、もう少し踏み込んで解析したら色々わかるはずやけど、一体全体、どないしたらええんや?」
と何ヶ月間も苦しみました。
結局、外注会社はここまで、つまり機械的に解析するだけで、その先の解釈のフォローは殆ど何もしてくれないんです。
そういうものなのですが...、同じ様に苦しんでいる研究者はたくさんいると思います。
悩んだ末に、前例に倣おうと、DNAマイクロアレイをやっている色々な論文を読んで解決方法を探しました。

その結果、パスウェイ解析というものに着目しました。
パスウェイ(Pathway)とは、代謝経路を意味し、一つずつの遺伝子ではなく、一つの代謝経路に入っている遺伝子をまとめて比較する方法です。

またまた、ウォッシュレット型トイレに例えて整理しましょう。
肛門洗浄に関連するまとまった遺伝子群を「肛門洗浄」パスウェイと考えて下さい。
このパスウェイには、"ノズルを出す"遺伝子や"お湯を噴出する"遺伝子、さらには"お湯の勢いを調整する"遺伝子などがあるでしょう。
つまり、洗浄ボタンを押せば動く一連の部品のそれぞれが一つの遺伝子と思って頂ければわかり易いと思います。
パスウェイ解析とは、これらの一つずつの遺伝子を個別に分析するのではなく、まとめて分析することで、肛門洗浄パスウェイが活性化しているか否かを、グループ間で比較する方法です。

その結果が図4(Figure 4)のCになります。
米国科学誌「PLos ONE(プロスワン)」掲載図

左の英語はパスウェイの名前、色が付いているレーンは左がLKM512マウスと若いマウスを、中央がLKM512マウスと対照マウスを、右側が対照マウスと若齢マウスを比較したものです。
色はこれらの活性の比較結果で、前者(中央のLKM512マウスと対照マウスの比較ならLKM512マウス)が強いと赤色、弱いと青色となります。
また、その比較の差の大きさで、赤色から青色まで9段階に色分けしてあります。
つまり、左レーンのLKM512マウスと若いマウスの比較結果には、濃い赤色や青色がありませんので、差が少ないことがわかります。
一方、LKM512マウスと対照マウスを比較(中央)して、LKM512マウスの方が弱くなっていたパスウェイには、つまり下の方の青色ですが、炎症経路に関連する遺伝子が多かったのです。
そして、これらの遺伝子は、対照マウスと若いマウスの比較(右)では、対照マウスの方が非常に高く発現しています(下の方が赤色になっている)。
つまり、加齢に伴う炎症パスウェイの活性化をLKM512投与で抑えていたことがわかります。
しかも、LKM512マウスと若いマウスの比較(左)では、差があまりないので、若いマウスと同程度に炎症パスウェイの発現を抑えていたのです。

さらにLKM512の炎症抑制に関連するデータはその後の図5(Figure 5)でも示しています。

今日の結果を1フレーズで述べると、「LKM512投与で大腸の炎症が遺伝子レベルでも抑えられていた」になります。

他にも色々な興味深いパスウェイ、例えば酸化ストレスなど、の変動が認められたのですが、ややこしいので、ここでの解説ではこれだけにしておきます。

今日は本当にこれを書くのに疲れました。
書いては消し、消しては書いて、昨日から2時間以上かかりましたね。

08/26
ほな、論文解説しますわ⑤ ―結果(大腸のアンチエイジング)―

昨日まででLKM512投与で長生きしたマウスと対照群の大腸に
大きな違いがあることがわかって頂けたと思います。
そこで、大腸の遺伝子発現を調べてみようと思ったのです。
つまり、どんな遺伝子が発現し、発現に差がある遺伝子があるのかを調べれば、
LKM512投与が大腸でやっている事の理解が進むのではないかと考えたのです。

ごめんなさい。
"遺伝子の発現"って難しいですかね?
遺伝子(DNA)を設計図と考えれば、設計図をコピーする働きがあるのがRNAで、
タンパク質はその最終製品です(ややこしいので今日は省きましたが、
タンパク質はアミノ酸が沢山くっついてできており、RNAはアミノ酸のくっつく順番と
個数を決め、設計図の指示通りのタンパク質を作るのです)。
つまり、ある遺伝子がその設計図に則りタンパク質を作ろうとする行為を
"発現"と表現します。
どの遺伝子が発現しているのかは、どの遺伝子に関連するRNAが作られているのかを調べれば推測できるのです。

ウォッシュレット型トイレを生命体に例えて整理しましょう。
肛門を洗浄していると、洗浄に関連する遺伝子が発現していることになります。
逆にいうと、洗浄に関連する遺伝子が発現していれば、今、このトイレは肛門を洗浄していると推測できるのです。
腸は見た目では何が起こっているかよくわかりません。
しかし、網羅的に遺伝子発現を調べれば、何が起こっているのか大体わかるのです。
この方法をDNAマイクロアレイ解析といいます。

さて、今回は大腸からRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行いました。
約25,000種類の遺伝子の発現を一度に調べました。
図4(Figure 4)のAを見て下さい→
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0023652
強く発現していた遺伝子が赤色、発現が弱かったものを緑色で表しています。
細い1本1本の横棒が1つずつの遺伝子発現を示しています。
つまり、縦に25,000本の棒が積み上げられている図です。
左が対照マウス、中央がLKM512マウス、右が実験スタート時の若いマウスのデータです。

左側(対照マウス)は上の方に発現が強かった遺伝子が多いですが、右(若いマウス)の上の方は緑で発現が弱く、全く逆のパターンを示しているのがわかると思います。
つまり、加齢により大腸の遺伝子発現パターンが大きく変わったということです。
大腸の老化が遺伝子レベルで起こっていることを示す結果だと思います。

さて、LKM512投与マウスはどうでしょう?
どう見ても、若いマウスのパターンに近いですね~。
つまり、大腸の遺伝子発現パターンの変化(老化)をLKM512投与で抑えたということが証明されたのです。

ここまで綺麗に差が出ることは滅多にないそうです。
DNAマイクロアレイは難しい技術のため、外部受託試験で行ったのですが、
その担当者の方が、「これは異なる動物種、例えばマウスとウサギ、の比較でしたか?」
と勘違いするほど明確な差が出ていました。

では、どんな遺伝子に影響があったのか?
それは次回にします。

あー、そろそろウンコ話や虫の話がしたくなってきましたねー。
畑も冬野菜が進んでいるのですが...。
こちらはツイッターでしましょうかね。

08/25
ほな、論文解説しますわ④ ―結果(大腸で何が起こったか)―

寿命が伸びたのは良いのですが、ちゃんと仮説通りなのかを検証しなくてはなりません。
ですから、ここからが大変なんですよ。
研究もですが、皆さんにわかり易く説明するのが・・・。

ややこしいことは全て省きましょう。
まず、投与したLKM512がガンガン増えて、腸内菌叢が変わって、腸管内のポリアミン濃度が上昇していました。
予定通りなのですが、結果が出るまで心配なもので、ここで「ホッ」としました。

それで、大腸を調べると、LKM512を与えていないかったグループは、色が悪くなり(若いマウスは薄いピンクかかった肌色ですが、どす黒い色になっていた)、糞便が溜まっている個体が多かったのです。
また、ピンセットとハサミで腸を摘出するのですが、
手慣れた若いマウスを扱っている感覚で、腸を軽くひっぱりながら周囲の組織から切り離す作業をすると、ブチっと切れてしまうのです。腸の組織自体がもろくなっているのです。
しかも臭い。
「ゲッ、なんじゃこれ? くっさーっ」
それに比べてLKM512投与群の腸の綺麗な事、扱いやすい事。感動しました。
言葉では伝えるのはこれが限界なので、論文の図2(Figure 2)のAを見て下さい。
必見です!→米国科学「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図

それで、大腸の組織切片を作製して観察することにしました。
簡単にいうと、大腸を薄く切って、細胞の様子などを観察したのです。
薄く切るとはどれ位か?
2-3 μm(マイクロメートル)です(1 μm は1mmの1000分の1)。
大腸をホースに例えると、めちゃくちゃ薄い輪切りにするイメージですね。
ふわふわ飛ぶ位で、透けている薄さです。
それを染色して、顕微鏡で観察するのです。
組織切片を作るのは職人技で、結構大変なのですよー。

すると、LKM512投与群は若い個体と同じような状態でしたが、そのブチブチ切れる対照マウスの大腸は、細胞の様子もボロボロになっていたのです。
また、腸を守る粘液を出す細胞(杯細胞という)は、LKM512投与群は綺麗に並んでいるのですが、対照群は数が激減していました。
これも写真を見て頂けるとよくわかると思います。図3(Figure 3)のAです。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図
左がLKM512、右が対照群の写真です。

上の写真では、対照群の大腸の絨毛が完全に崩壊しているのがわかると思います。
下側の写真で紫色に染まっている細胞が粘液産生細胞です。LKM512投与マウスでは、この細胞がびっちりあるのに対照群では無いですよね。粘液分泌できません。

みなさんの大腸、大丈夫でしょうか?

08/24
ほな、論文解説しますわ③ ―結果(寿命が伸びた)―

「こんな実験やってられん (×_×;)」
嘆き苦しみながら、先が見えないままやっていました。
不安になると、人間、心がネガティブに働くものです。
「そもそも、LKM512を投与するだけで寿命が伸びるわけないやろ。」
などと、自分の仮説の全面否定を始めるわけですね。

しかし、半年位過ぎた頃から、ポツポツと死んでくる個体が出てき始めました。
1匹、2匹、3匹と...。
マウスは16-7ヶ月齢に達しで、平均寿命の24ヶ月齢(2年)に近付いてきているのです。
不謹慎かもしれませんが、99匹、98匹、97匹と作業が少しずつ楽になっていくことを示しており、次第に苦痛が少なくなっていきました。
それに、こんなに長くマウスを飼ったことなかったので(通常の実験は生後5‐20週齢程度で実施するので、殆どの研究者が18ヶ月齢のマウスを見た経験はないと思います)、マウスの老化の進行を観察することに強い好奇心が生まれていました。

そして、気が付くと、
「あれっ、なんか対照群(LKM512を与えていない集団)の方が毛並みが悪いなー」
「あれれっ、死んでる数も多いなー」
「あららららっ、腫瘍や潰瘍はLKM512の方にはできへんなー」
「おいおいおいおい、これ、凄いことなんとちゃうかな!!!!」
となってきたのです。
気が付けば、ちょうど1年経ち、LKM512投与マウスは15匹生き残っているのに、対照群は6匹という状況になっていました。

この結果は、論文の図1(Fig. 1)になっています。
米国科学誌「PLos ONE(プロスワン)」掲載図
(A)が生存曲線。縦軸がマウスの生存割合、横軸が時間(週)で、
赤がLKM512で青が対照群です。
(C)は見た目の違いの写真で、(D)は腫瘍(左)と潰瘍(右)の発生率です。

どれ位凄いことなのか、単純にヒト(日本人)換算してみました。
実験を終えた最終週でのLKM512群の生存率は70%です。
一方、対照群が生存率70%に落ちたのは、その半年位前です。
寿命を2年とすると半年の伸びは寿命の25%の伸びを意味します。
日本人の平均寿命80歳で考えると、寿命伸長幅は20歳で、平均寿命が100歳になることになります。
日本人の生存率が7割位になるのはたぶん65-70歳と思いますが、この頃までは多くの方はまだ自由に活動して元気です(いわゆる健康寿命の平均は70歳位でしょう)。
健康寿命が20年伸びるとすると、85-90歳位までは元気に過ごせることになるのですね!

んー、20年も寿命が伸びたら、私なら、通算排便回数が10,000万回も増えますよ!

           
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