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LKM512
メイトー
協同乳業研究所

08/31
2011年版 野菜作ってます18 ―秋冬野菜の進捗―

今日、8月31日は"やさい"の日。

3週間ぶりに野菜ブログです。

昨年、あまりの残暑で芽が出ず苦戦したニンジン。
今年は時々降る雨にも助けられ、絶好調です。
201108312.JPG

そして、ブロッコリーとキャベツも苗を植えました。
今は寒冷紗をかけて成長初期の被害を最小限に抑えようとしています。

201108311.JPG

手前がブロッコリー、向うがキャベツですね。
ブロッコリーは、このあと11月頃には頂点のつぼみが収穫できて、そのあとは、小振りのつぼみが1月まで採れますので素晴らしい作物です。

この後、白菜、ダイコンと種を蒔き、
小松菜、水菜、ラディッシュのような葉物野菜もどんどん種を蒔いていく予定です。
土壌は既に耕して、肥料を馴染ませて準備中です。
他にも何かあったような気がしますが、秋冬野菜の本番です。

忘れていましたが、出遅れたモロヘイヤもやっと私の腰より大きくなり、ドンドン摘めるようになりました。

201108313.JPG

ただ、去年より株自体の成長が不十分で、週に2回位の収穫ですかね。
贅沢にモロヘイヤの新芽だけ摘んで食べています。

08/30
ほな、論文解説しますわ⑦ ―考察(凄いことは)―

今日でこのシリーズを終えたいと思います。

考察は最も大変で、最初に立てた仮説が正しかったのか?
この実験でわかったことは何なのか?
過去の近い研究データとの比較も必要ですし、
この研究ではわからなかった事や新たに生じた疑問も提示する必要があるでしょう。
今回のように、ポリアミンのような作用が多岐にわたっている物質が主役だと、その安全性についても熱く述べなくてはなりません。

これらを考察するために、実は補助する図や表がたくさん必要になります。
それがSupporting Informationというもので、Web上では見ることができます。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図をずーっと下の方に進んでもらえると、下4分の1位の位置にSUPPORTING INFORMATIONと書いた箇所が出てきて、その下にFigure S1, Figure S2・・・Table S1・・・とあります。
クリックしてもらえると、その図や表を見ることができます。
この論文だと、本題の図の他に補助の図が6つに表が3つあります。
これらを使って、考察していることが正しい可能性を示したり、他データとの比較を行ったりしているのです。
補助図6(Figure S6)なんて、わざわざこれだけのために実験していますから。
サポートのための図ですが、これを作るのに何日もかかることが多くて大変で、論文を熟読してくれる方以外には無視されているのでかわいそうな図表です。

さて、色々考察はしましたが、この研究の意義あるいは重要性のみ抜粋します。
第一に、重要なのは、
カロリー制限(ヒトでいう食事制限)なしで哺乳類の寿命が伸びることが確認された食品は、これまでレスベラトロール(赤ワインに含まれる成分)しかなく、これが2番目の食品であるということです。(ポリアミンの直接投与でも同様の成績があるのですが、ポリアミンを試薬の形で食べることは認められていない。)

その他には、
ポリアミンによる大腸の機能維持が、慢性炎症の抑制を誘導し、寿命を伸ばした可能性を示したことも意義があります。

「プロバイオティクスで寿命が伸びた」という事実も大事でしょうね。
何しろ、テレビや新聞では、この部分ばかりが取り上げられるのですから。
「他の大事なキーワード、特にポリアミン、についても書いてや!」
と思うのですが、気軽に、しかも安価で続けられるというのは特筆すべきことでしょう。
ヨーグルト不老長寿説というのが100年前に提唱されていながら、殆ど寿命に関する研究はなされていなかったわけですから。

プロバイオティクス投与で機能性の高い物質(ポリアミン)を大腸内で作らせて保健効果を得た点も大事です。
つまり、プロバイオティクスが直接作用するというより、腸内菌叢を介して産生物を作らせて、それに効果があるというアプローチです。
誰が何と言おうと、ポリアミンを大腸内で作らせるアプローチは我々の専売特許でして、10年以上前から挑戦し続けているものです。
こんな遠回りで証明が難しい無謀なチャレンジは、他の人にはなかなかできないことでしょう。

まだまだ書きたいことはありますが、ややこしくなりますので、
この論文の解説はこれ位にしたいと思います。

今回、マウスの寿命は伸び、報道もされ大騒ぎになりましたが、まだまだ満足していません。 
課題はまだまだあるのです。だから面白い。

あっ、そうや!
最後に、強く主張しておきますが、
寿命伸長効果が確認されたビフィズス菌はLKM512のみですから。
他の菌株ではそんな報告ありません。
便乗商品に騙されないで下さいね。

08/29
ほな、論文解説しますわ⑥ ―結果(大腸の遺伝子発現)―

LKM512を1年間与えたら、LKM512投与マウスと対照(LKM512を与えていない)マウスの大腸の遺伝子発現パターンが大きく異なったことは良くわかって頂けたと思います。

では、何が変動していたのか?
1つずつの遺伝子を比べていてもよくわかりません。
何しろ25,000個以上の遺伝子を調べておりますので。
しかも遺伝子の名前って、アルファベットと数字が殆どで、何に関連しているものかよくわからないのです。
DNAマイクロアレイ初体験の私は、
「絶対に良いデータやから、もう少し踏み込んで解析したら色々わかるはずやけど、一体全体、どないしたらええんや?」
と何ヶ月間も苦しみました。
結局、外注会社はここまで、つまり機械的に解析するだけで、その先の解釈のフォローは殆ど何もしてくれないんです。
そういうものなのですが...、同じ様に苦しんでいる研究者はたくさんいると思います。
悩んだ末に、前例に倣おうと、DNAマイクロアレイをやっている色々な論文を読んで解決方法を探しました。

その結果、パスウェイ解析というものに着目しました。
パスウェイ(Pathway)とは、代謝経路を意味し、一つずつの遺伝子ではなく、一つの代謝経路に入っている遺伝子をまとめて比較する方法です。

またまた、ウォッシュレット型トイレに例えて整理しましょう。
肛門洗浄に関連するまとまった遺伝子群を「肛門洗浄」パスウェイと考えて下さい。
このパスウェイには、"ノズルを出す"遺伝子や"お湯を噴出する"遺伝子、さらには"お湯の勢いを調整する"遺伝子などがあるでしょう。
つまり、洗浄ボタンを押せば動く一連の部品のそれぞれが一つの遺伝子と思って頂ければわかり易いと思います。
パスウェイ解析とは、これらの一つずつの遺伝子を個別に分析するのではなく、まとめて分析することで、肛門洗浄パスウェイが活性化しているか否かを、グループ間で比較する方法です。

その結果が図4(Figure 4)のCになります。
米国科学誌「PLos ONE(プロスワン)」掲載図

左の英語はパスウェイの名前、色が付いているレーンは左がLKM512マウスと若いマウスを、中央がLKM512マウスと対照マウスを、右側が対照マウスと若齢マウスを比較したものです。
色はこれらの活性の比較結果で、前者(中央のLKM512マウスと対照マウスの比較ならLKM512マウス)が強いと赤色、弱いと青色となります。
また、その比較の差の大きさで、赤色から青色まで9段階に色分けしてあります。
つまり、左レーンのLKM512マウスと若いマウスの比較結果には、濃い赤色や青色がありませんので、差が少ないことがわかります。
一方、LKM512マウスと対照マウスを比較(中央)して、LKM512マウスの方が弱くなっていたパスウェイには、つまり下の方の青色ですが、炎症経路に関連する遺伝子が多かったのです。
そして、これらの遺伝子は、対照マウスと若いマウスの比較(右)では、対照マウスの方が非常に高く発現しています(下の方が赤色になっている)。
つまり、加齢に伴う炎症パスウェイの活性化をLKM512投与で抑えていたことがわかります。
しかも、LKM512マウスと若いマウスの比較(左)では、差があまりないので、若いマウスと同程度に炎症パスウェイの発現を抑えていたのです。

さらにLKM512の炎症抑制に関連するデータはその後の図5(Figure 5)でも示しています。

今日の結果を1フレーズで述べると、「LKM512投与で大腸の炎症が遺伝子レベルでも抑えられていた」になります。

他にも色々な興味深いパスウェイ、例えば酸化ストレスなど、の変動が認められたのですが、ややこしいので、ここでの解説ではこれだけにしておきます。

今日は本当にこれを書くのに疲れました。
書いては消し、消しては書いて、昨日から2時間以上かかりましたね。

08/26
ほな、論文解説しますわ⑤ ―結果(大腸のアンチエイジング)―

昨日まででLKM512投与で長生きしたマウスと対照群の大腸に
大きな違いがあることがわかって頂けたと思います。
そこで、大腸の遺伝子発現を調べてみようと思ったのです。
つまり、どんな遺伝子が発現し、発現に差がある遺伝子があるのかを調べれば、
LKM512投与が大腸でやっている事の理解が進むのではないかと考えたのです。

ごめんなさい。
"遺伝子の発現"って難しいですかね?
遺伝子(DNA)を設計図と考えれば、設計図をコピーする働きがあるのがRNAで、
タンパク質はその最終製品です(ややこしいので今日は省きましたが、
タンパク質はアミノ酸が沢山くっついてできており、RNAはアミノ酸のくっつく順番と
個数を決め、設計図の指示通りのタンパク質を作るのです)。
つまり、ある遺伝子がその設計図に則りタンパク質を作ろうとする行為を
"発現"と表現します。
どの遺伝子が発現しているのかは、どの遺伝子に関連するRNAが作られているのかを調べれば推測できるのです。

ウォッシュレット型トイレを生命体に例えて整理しましょう。
肛門を洗浄していると、洗浄に関連する遺伝子が発現していることになります。
逆にいうと、洗浄に関連する遺伝子が発現していれば、今、このトイレは肛門を洗浄していると推測できるのです。
腸は見た目では何が起こっているかよくわかりません。
しかし、網羅的に遺伝子発現を調べれば、何が起こっているのか大体わかるのです。
この方法をDNAマイクロアレイ解析といいます。

さて、今回は大腸からRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行いました。
約25,000種類の遺伝子の発現を一度に調べました。
図4(Figure 4)のAを見て下さい→
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0023652
強く発現していた遺伝子が赤色、発現が弱かったものを緑色で表しています。
細い1本1本の横棒が1つずつの遺伝子発現を示しています。
つまり、縦に25,000本の棒が積み上げられている図です。
左が対照マウス、中央がLKM512マウス、右が実験スタート時の若いマウスのデータです。

左側(対照マウス)は上の方に発現が強かった遺伝子が多いですが、右(若いマウス)の上の方は緑で発現が弱く、全く逆のパターンを示しているのがわかると思います。
つまり、加齢により大腸の遺伝子発現パターンが大きく変わったということです。
大腸の老化が遺伝子レベルで起こっていることを示す結果だと思います。

さて、LKM512投与マウスはどうでしょう?
どう見ても、若いマウスのパターンに近いですね~。
つまり、大腸の遺伝子発現パターンの変化(老化)をLKM512投与で抑えたということが証明されたのです。

ここまで綺麗に差が出ることは滅多にないそうです。
DNAマイクロアレイは難しい技術のため、外部受託試験で行ったのですが、
その担当者の方が、「これは異なる動物種、例えばマウスとウサギ、の比較でしたか?」
と勘違いするほど明確な差が出ていました。

では、どんな遺伝子に影響があったのか?
それは次回にします。

あー、そろそろウンコ話や虫の話がしたくなってきましたねー。
畑も冬野菜が進んでいるのですが...。
こちらはツイッターでしましょうかね。

08/25
ほな、論文解説しますわ④ ―結果(大腸で何が起こったか)―

寿命が伸びたのは良いのですが、ちゃんと仮説通りなのかを検証しなくてはなりません。
ですから、ここからが大変なんですよ。
研究もですが、皆さんにわかり易く説明するのが・・・。

ややこしいことは全て省きましょう。
まず、投与したLKM512がガンガン増えて、腸内菌叢が変わって、腸管内のポリアミン濃度が上昇していました。
予定通りなのですが、結果が出るまで心配なもので、ここで「ホッ」としました。

それで、大腸を調べると、LKM512を与えていないかったグループは、色が悪くなり(若いマウスは薄いピンクかかった肌色ですが、どす黒い色になっていた)、糞便が溜まっている個体が多かったのです。
また、ピンセットとハサミで腸を摘出するのですが、
手慣れた若いマウスを扱っている感覚で、腸を軽くひっぱりながら周囲の組織から切り離す作業をすると、ブチっと切れてしまうのです。腸の組織自体がもろくなっているのです。
しかも臭い。
「ゲッ、なんじゃこれ? くっさーっ」
それに比べてLKM512投与群の腸の綺麗な事、扱いやすい事。感動しました。
言葉では伝えるのはこれが限界なので、論文の図2(Figure 2)のAを見て下さい。
必見です!→米国科学「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図

それで、大腸の組織切片を作製して観察することにしました。
簡単にいうと、大腸を薄く切って、細胞の様子などを観察したのです。
薄く切るとはどれ位か?
2-3 μm(マイクロメートル)です(1 μm は1mmの1000分の1)。
大腸をホースに例えると、めちゃくちゃ薄い輪切りにするイメージですね。
ふわふわ飛ぶ位で、透けている薄さです。
それを染色して、顕微鏡で観察するのです。
組織切片を作るのは職人技で、結構大変なのですよー。

すると、LKM512投与群は若い個体と同じような状態でしたが、そのブチブチ切れる対照マウスの大腸は、細胞の様子もボロボロになっていたのです。
また、腸を守る粘液を出す細胞(杯細胞という)は、LKM512投与群は綺麗に並んでいるのですが、対照群は数が激減していました。
これも写真を見て頂けるとよくわかると思います。図3(Figure 3)のAです。
米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」掲載図
左がLKM512、右が対照群の写真です。

上の写真では、対照群の大腸の絨毛が完全に崩壊しているのがわかると思います。
下側の写真で紫色に染まっている細胞が粘液産生細胞です。LKM512投与マウスでは、この細胞がびっちりあるのに対照群では無いですよね。粘液分泌できません。

みなさんの大腸、大丈夫でしょうか?

08/24
ほな、論文解説しますわ③ ―結果(寿命が伸びた)―

「こんな実験やってられん (×_×;)」
嘆き苦しみながら、先が見えないままやっていました。
不安になると、人間、心がネガティブに働くものです。
「そもそも、LKM512を投与するだけで寿命が伸びるわけないやろ。」
などと、自分の仮説の全面否定を始めるわけですね。

しかし、半年位過ぎた頃から、ポツポツと死んでくる個体が出てき始めました。
1匹、2匹、3匹と...。
マウスは16-7ヶ月齢に達しで、平均寿命の24ヶ月齢(2年)に近付いてきているのです。
不謹慎かもしれませんが、99匹、98匹、97匹と作業が少しずつ楽になっていくことを示しており、次第に苦痛が少なくなっていきました。
それに、こんなに長くマウスを飼ったことなかったので(通常の実験は生後5‐20週齢程度で実施するので、殆どの研究者が18ヶ月齢のマウスを見た経験はないと思います)、マウスの老化の進行を観察することに強い好奇心が生まれていました。

そして、気が付くと、
「あれっ、なんか対照群(LKM512を与えていない集団)の方が毛並みが悪いなー」
「あれれっ、死んでる数も多いなー」
「あららららっ、腫瘍や潰瘍はLKM512の方にはできへんなー」
「おいおいおいおい、これ、凄いことなんとちゃうかな!!!!」
となってきたのです。
気が付けば、ちょうど1年経ち、LKM512投与マウスは15匹生き残っているのに、対照群は6匹という状況になっていました。

この結果は、論文の図1(Fig. 1)になっています。
米国科学誌「PLos ONE(プロスワン)」掲載図
(A)が生存曲線。縦軸がマウスの生存割合、横軸が時間(週)で、
赤がLKM512で青が対照群です。
(C)は見た目の違いの写真で、(D)は腫瘍(左)と潰瘍(右)の発生率です。

どれ位凄いことなのか、単純にヒト(日本人)換算してみました。
実験を終えた最終週でのLKM512群の生存率は70%です。
一方、対照群が生存率70%に落ちたのは、その半年位前です。
寿命を2年とすると半年の伸びは寿命の25%の伸びを意味します。
日本人の平均寿命80歳で考えると、寿命伸長幅は20歳で、平均寿命が100歳になることになります。
日本人の生存率が7割位になるのはたぶん65-70歳と思いますが、この頃までは多くの方はまだ自由に活動して元気です(いわゆる健康寿命の平均は70歳位でしょう)。
健康寿命が20年伸びるとすると、85-90歳位までは元気に過ごせることになるのですね!

んー、20年も寿命が伸びたら、私なら、通算排便回数が10,000万回も増えますよ!

08/23
ほな、論文解説しますわ② ―方法―

研究で一番大事なのは方法です。
実験条件で結果が大きく変わることは容易に想像がつくと思います。

何かマーカー(例えば糞便中の成分や大腸の遺伝子発現など)を測定するための細かい方法での試行錯誤は、試料さえあれば何度でもやり直せるので大したことではないのですが、投与方法など計画段階でのミスは致命傷です。

最初に悩んだのは、マウスの匹数です。
匹数は多い方が信頼性は高くなるのは当然です。
「でも、数が増えれば増えるほど世話が大変になるー」
結局1群20匹にしました。
寿命の実験の知識が少なく、これは半分賭けでした。
実は、別の菌株も試したので(論文審査過程で、解釈がややこしくなるので余計なものはカットしろということでデータ化できませんでした)、100匹を超えるマウスでのスタートでした。

もう一つ、ヒトでの応用を視野に入れた場合、健康寿命を意識し始める30-40歳代から食べ始めて効果があることが大事と考えました。
つまり、多くの動物実験は乳離れしてすぐの若いマウスで投与試験が行われますが、これは非現実的な実験と考え、ヒト換算で30-35歳位にあたる10ヶ月齢のマウスからスタートする点にはこだわりました。

もう1点、私がこだわったのは、無理のないビフィズス菌LKM512の投与です。
大体の食品成分の動物実験は毎日投与を行います。しかもその殆どが過剰量で。
でも、そんなに実生活で続けられませんよね。
対症療法で「効いた、効かない」が実感できる食品ならまだしも、
寿命は、自分では「伸びた縮んだ」と評価できない、つまり、体感できないものです。
ですから、少なめに週3回の投与にしました。
基本的に「月、水、金」、用事がある週は曜日をずらし、週に3回を守りました。

菌数は体重1kgあたり約10億個にしました。
LKM512は大腸内で糞便1gあたり100-1000億個にまで増殖しますので(これは既に何度も確認しています)、摂取菌数は極端に少なくなければ気にする必要はないのですが、
1000億個を入れたカプセルは簡単に作れますので、体重100kgの方でもカプセル1個で摂取できる現実的な量です。

「まあ、これで結果が出ればラッキーや!」
と意気揚々と始めたのですが、しんどかったですね。
寿命の実験ですから、とにかく長期戦。
1匹ずつ、試料を測りとり、マウスを保定し、口から正確に投与していくわけですから、その労力は想像以上のものです。
20匹目位までは簡単なのですが、それ以降になると集中力が少しずつ欠けてくるのですね。
攻撃的で手強いマウスもいます。
大体2人で作業を行っていましたが、1人の時は気が狂いかけていましたね。
この他にも飲用水の交換、掃除などがありますので、午後1時にスタートしても午後4時から5時になっていました。
それが1年は続く・・・。盆も正月もゴールデンウィークも関係なく・・・。
先の見えない不安からくるストレス。

「こんな実験やってられん (×_×;)」
自分で計画しているため誰にも文句が言えず、嘆き悲しむ毎日でありました。

08/22
ほな、論文解説しますわ① ―背景―

米国オンラインジャーナルPLoS One(プロス・ワン)に公開されました我々の論文には、
予想以上の反響があり、多くのマスコミに取り上げられました。

ただ、きっちりと理解されている方は殆どいないでしょうから、
このブログで解説しようじゃないですか。

といいましても、論文に書いてある事をそのままでは面白くないでしょうから、
実験をやっていた私の心の中を中心に書きたいと思います。

大きな背景として、
「何としても寿命を伸ばしたい!これが出来れば凄いことだ!」
という気持ちで実験を始めたわけではありません。
「ビフィズス菌LKM512を使えば、理論的には、ほぼ確実に寿命が伸びるわ~」
と思ったから実験を始めたのです。

それは、今回の一連の報道ではほぼ無視されているポリアミンという物質が鍵となります。

健康寿命を脅かす最大要因は、老年病です。

例えば、2型糖尿病やアルツハイマーなどですね。
これらの原因は生活習慣が強く関わっていると言われています。

生活習慣といえば、食生活、タバコ、ストレス、睡眠時間...、と、幅が広く、個体差も大きく特定できないのですが、共通点があり、これらの患者は慢性炎症状態であり、それが発病に関与していることが疫学的調査でわかってきています。

慢性炎症とは、痛みを伴う炎症ほど強くないが、ずーっと長期間弱い炎症状態が続くことです。
つまり、老年病にはどんな直接的な原因があろうが、この炎症さえ抑えれば防ぐことができる可能性が高いと考えました。

そこで、LKM512を食べたら大腸で増えるポリアミンが活躍するのです。
大きく以下の2つの作用が考えられました(細かい作用はもっとありますが、今日は省く)。
①大腸のバリア機能を高め、食物や腸内細菌由来の炎症物質を体内に侵入させない作用
②吸収されたポリアミンが全身を巡り、直接的にリンパ球に働きかけ炎症を抑える作用

既に、ポリアミンにこの2つの作用があることは知られていましたから、
これを信じて長期間になるであろうマウス寿命実験をスタートさせたのです。
"自信満々"時々"不安"な心境で。

08/19
ツマグロヒョウモン

残り少ない夏ですから、論文の件は忘れて虫ブログ。
なんといっても、このブログファンは虫ブログを支持してくれる方が多いですから。

今日紹介するのはツマグロヒョウモンです。
漢字で書くと褄黒豹紋です。
さて、どんな虫の名前でしょう?
正解はチョウの一種で、こいつです。

20110819.JPG

そのままの名前ですね。
ツマグロとは、翅の両端が黒いことを、
ヒョウモンとは、豹柄の紋があるからです。
ヒョウモンチョウの種類は多いですが、その一種ですね。
このチョウも昔は関西以西の暖かい地域に棲息していましたが、温暖化で北上中。
最近では関東地方の北部まで棲息範囲を広げており、この個体も埼玉県所沢市で見つけたものです。

ちなみにこれはメスの個体で、オスは模様が大きく異なります。
メスに比べると綺麗ではないですが、また捕獲したら紹介します。

ところで、この写真、綺麗と思いませんか?
相変わらず4-5年前の普通のデジカメですよ。
花に寄ってきたのを発見したので、
気配を消して近づいて、頑張って撮影しました。
渾身の一枚です。

08/18
なかなかの反響

昨日、アメリカのオンラインジャーナルPLoS One(プロス・ワン)に公開されました我々の論文には、予想以上の反響がありました。
昨日は毎日放送の夕方のニュースVOICEにも取り上げられました。
といいますか、進行形なので、"反響があります"というのが正しい表現かもしれません。

コツコツと苦労してマウスのウンコを集めて解析した甲斐が少しはあったというものでしょう。

ただ、インターネット上の記事をみていると、正しく伝わっていない箇所もあるので、
「ちゃう、ちゃう」
と思ったり、一般の方々が読まれることを考えると
「大意は変わらないので、まあ、ええか。興味を持ってもらえることの方が大事やから。」
と思ったりしています。

とはいえ、研究実施者で論文筆頭著者として、以下の点だけは確認させて下さい。

ビフィズス菌全てにこのような能力があるわけではありません。
LKM512のように、腸内菌叢を変える能力が強い菌でなければ、
大腸内でポリアミンは増えないだろうと思います。
大腸内でLKM512ほど増殖能力が高いビフィズス菌は、今の所、報告されていません。
現在、我々は、より確実に腸内細菌にポリアミンを作らせる方法を研究しており、
この点は世界中のどの研究チームより進んでおりますので、
この解釈に間違いと断言できます。
それに、実際に大腸内ポリアミン濃度を増やす研究成果が発表されているビフィズス菌はLKM512しかないことも知っておいて下さい。
プロバイティクスは菌株により能力が異なります。
どんなビフィズス菌でも同じということは、決してありませんので、
それだけは主張させて下さい。

さて、私も夏季休暇で、5日間もLKM512を摂取していなかったので
ウンコが臭くなってきております。
早く食べよーっと。

           
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