09/16
論文掲載(臨床試験:アトピーのかゆみ軽減) ―序・背景―

我々の研究論文が掲載された際、気分が乗れば解説ブログを書いて来ました。
気分が乗れば...、です。
ややこしい研究内容をわかり易く説明するのが至難の業だからです。

それに、掲載された時点では、私の気持ちは既に次のステップに向かっているので、
テンションが上がらないのです。
掲載される時は、受理されてから数ヶ月経っている場合が多いので。

ただ、今回はちゃんと書いておきます。
「今回は」と掲載されたばかりのような表現をしましたが、すいません。
実は8月号に掲載されたので、一ヶ月半さぼっていたわけでありまして...。

さて、本題
ビフィズス菌LKM512の臨床試験の結果をまとめた論文が、
米国アレルギー・喘息・免疫学会(※)の機関誌
Annals of Allergy, Asthma, & Immunology
に公開されたのです!

※この学会名の日本語訳は自信なし。
American College of Allergy, Asthma & Immunologyのことですが、
日本語訳がないかとインターネットで調べていたら、
上記の日本語訳をしているページが複数見つかったので使用しました。
1942年に設立され、米国中心に約5500名のアレルギー、喘息や免疫の研究をしている医師・研究者が所属している学術組織です。

今回は、いつもの腸内細菌の産生物がどうのこうのって、ややこしい話ではなく、
基本的な結論は極めてシンプルでわかり易いはずです。

タイトルは
Anti-pruritic effects of the probiotic strain LKM512 in adult patients with atopic dermatitis
成人型アトピー性皮膚炎におけるプロバイオティクスLKM512のかゆみ抑制効果

わかりやすいでしょ!
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我々は既に、2007年に慶応大学医学部と実施した小規模臨床試験でLKM512入りヨーグルトが成人型アトピー患者に有効であることがわかっていました。

その内容はClinical & Experimental Allergyというジャーナルに掲載されていたのですが、
これを読まれた著名なアレルギーの専門医の先生(今回の臨床試験の責任医師である用賀アレルギークリニックの永倉俊和先生)が、ご自分の患者さんで試されて、
「これ、たぶん本当に効くから臨床試験をやりませんか? 
1年間で劇的に治った患者がいるんですよ。
長年診て来た女性で、酷い症状で元気もなかったのだけど、
LKM512を摂り始めたらみるみる回復し、性格もどんどん明るくなり、
恋人ができて、気が付いたら結婚して、もう病院にも殆ど来なくなりましたよ(笑)。
LKM512だけの効果とは信じられないけど、
実際、それ以外の治療法は変えていないので。
長年の経験からいうと、効く人には効くよ~、これ。」
と連絡を下さったのがスタートです。

殆どのアトピー性皮膚炎に有効といわれている食品は、
臨床試験できっちり効果判定がなされていません。
このような状況で、怪しい商品が沢山ある中、
やるなら徹底的にと、
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice: 略してGCP)に準拠して極めて厳密な条件で試験を行ったのです。


そういうわけで、明日から数回にわたり、わかり易く解説します。
とはいえ、明日以降の原稿は全く書いてない~。
しんどいな~。