12/04
乳酸菌学会秋季セミナーの心残り

先週の金曜日、乳酸菌学会秋季セミナーで講演をしてきた。
他の方の講演も面白く有意義な時間を過ごせたが、心残りが一点ある。

光岡知足先生に挨拶できなかったことである。

腸内細菌の研究を実施されている方なら、誰でもご存知、
腸内細菌学のパイオニアであり、腸内細菌の分離・培養・分類・腸内細菌と健康との関係についての研究を世界に先駆けて行われた偉大な先生である。
光岡先生は、私の師匠でこのブログにも何度か登場して頂いている辨野義己先生の師匠であり、私は光岡先生の孫弟子に当たる。

1998年に私が辨野先生の指導で腸内細菌の研究を始めた時は、
光岡先生の本や論文を必死で読み、
辨野先生からは、光岡先生の偉大さを直接聞かされたものである。
ところが、2000年代前半、辨野先生が分子生物学的手法を取り入れたのをきっかけに、
少々研究に対するアプローチというか考え方のずれがあったようで、
大師匠と師匠は冷戦状態に、いや戦争状態(???)・・・。

私はとばっちりを受ける形で、学会会場で挨拶しても光岡先生に怒られる始末。
「触らぬ神に祟りなし」の心境で(まさにこの分野では神ですから)私は距離を置き、
少々悲しい気持ちと、いつか見返してやろうという気持ちの両方があった。

その先生が、突如、私の講演前に会場に現れたのである。
私の後に講演される東大の平山先生(平山先生も別系統の孫弟子)に声を掛けに演者がいる席へと近づいて来られた。
謎のオーラをまといながら。
目が合ったので軽く目礼をしたが、言葉は交わさず。

ただ、私の論文が科学ジャーナルに掲載される度に、
別刷り(論文を印刷したもの)を送って欲しいとお葉書を頂戴していた経緯があるので、
(今でも葉書は全て保存している。なにしろ"世界の光岡"からの直手紙であるから。)
発表後、10年ぶりに挨拶に伺おうと決意。

私自身も10年前とは違い、色々やってきた自負もある。
40年前に光岡先生が立てた腸内細菌の代謝産物が生体に与える影響の仮説、
誰も手を付けなかった代謝産物の分野に真っ向から立ち向かっているのはこの私だけだ。
率直な批評がもらいたい。

講演後の休憩時間、色々な質問に対応後、光岡先生を探したが見当たらない。
周囲の人に聞くと、「たぶん、もう帰られました」。

平山先生と私の講演だけを聴きにご来場されたようである。

何かうれしいが、講演前に話かければよかった。
半径2 m以内の距離だったのに・・・。
只々、後悔している。

もしかしたら平山先生の講演だけを聴きに来られた可能性もあるが、
その場合、このブログが台無しになるので、それは考えない。