カレンダー

カテゴリー

最新のエントリー

 

アーカイブ

2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年

検索

LKM512
メイトー
協同乳業研究所

04/23
ヒシバッタ黒紋型の私なりの考察

先週紹介したヒシバッタの黒紋に関する論文ですが、
私の意見は著者と違いますので、ちょっと書かせて頂きます。

変温動物では、体色は体温調節に関与し、
黒っぽいほど体温上昇を促進するといわれており、
この論文では体温調節説の検証として、採集地の緯度で黒紋型の頻度を比較しています。

その結果、オスでは高緯度地方ほど黒紋型頻度が高くなることがわかったそうです。
但し、北海道では例外的に黒紋頻度が低く、また、メスの殆どが黒紋型だったようです。

一通り読んだ限り(他に読む論文があるだろうと言われそうですが...)、
著者らは、夏場のオーバーヒート(体温上昇)のリスクとの関係を重視しており、
オスが夏場に暑い開けた草地で配偶者を探索するため、
暑い低緯度地域のオスは黒紋型の方がオーバーヒートし易く、
黒紋は不利に働き、熱い低緯度では数が少ないと考察しています。
一方で、体温調節だけでは説明がつかないので、
黒紋によるコントラストが周囲の環境に溶け込む隠ぺい効果があることから、
探索行動をしないメスは、この隠ぺい効果の方による利益がオーバーヒートのリスクより高いため、殆どが黒紋型であると考察しています。

ただ、私は、同じ体温調節説でも、黒紋を夏場のオーバーヒートのリスクではなく、
冬場の体温上昇のための利益と考えるほうが妥当ではないかと考えています。
このブログでも、真冬の1月の埼玉県の畑で発見したヒシバッタを紹介したように

(2012年1月17日「ヒシバッタ」ブログ参照)

このバッタが本州では真冬でも活動していることを考慮すれば、
冬の貴重な太陽熱の獲得に黒紋は役立っていると推測されます。
そう考えれば、著者らが説明できなかった北海道で黒紋頻度の低下も説明できます。

北海道では寒さが厳しく、さすがのヒシバッタも冬には活動していないはずですから、
冬に黒紋で太陽熱獲得の必要がないのです。
従って、夏場のオーバーヒートのリスクのみがあり、黒紋型の頻度が著しく低いのです。

どうですかね?
まあ、私は専門家ではないので、好き勝手な考察ですが...。

一昨日も畑でヒシバッタを発見しましたので、撮影しました!
極小の黒紋があり、黒紋型か無紋型か微妙ですね。


20120424.JPG

寒冷紗の中で、若い野菜を食べていたので、放り出しました。

04/20
ヒシバッタ黒紋型

以前にも紹介した背中が菱形のヒシバッタの話です。
参照:ヒシバッタ
1月のブログの個体は、開けた畑、
つまり比較的地表が乾燥している土地で見つけたのですが、
背中に模様がない無紋型でした。

しかし、このような草原ではどうかと探してみました。
201204201.JPG発見! わかりますかね?中央です。
背中に黒い模様がありますねー。
201204202.JPG
黒紋型といいます。
黒紋型にも色々な形があるのですが、
これは外側に黒い筋が出るタイプですね。

さて、これは遺伝的なものか、環境によるものか?
私は周囲の視覚的環境に依存する(つまり保護色として変化する)と思っていたのですが、
色々な説があるようです。
面白い論文が公開されていました。

鶴井香織、西田隆義.ハラヒシバッタ(バッタ目ヒシバッタ科)における黒紋型頻度の緯度クライン.大阪市立自然史博物館業績第420号 2010年.

京大農学部の先生方のレポートです。
この先生方は体温調節説に注目し、採集地の緯度で黒紋型の頻度を比較しています。
それにしても、マニアックで楽しそうな研究ですな。
その結果、オスでは高緯度地方ほど黒紋型頻度が高くなることがわかったそうです。
但し、北海道では例外的に、黒紋頻度が低いようです。
メスは殆どが黒紋型だったようです。
詳しく知りたい方は自由にリンクできますので、
こちらから→http://www.musnh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/64/64-003.pdf#search='ヒシバッタ'

ちなみに、花見もせずに、地面ばかり見てヒシバッタを探していると、
「何か落としたのですか?」
と結構声をかけられることを学びました。

03/05
啓蟄(2012年版)―新参者で祝いましょう―

このブログでは、毎年きっちりと祝う啓蟄

2010年啓蟄
2011年啓蟄
虫達が活動し始める日といわれております。
私の中の虫暦は、啓蟄を新年度初日と設定しています。

ということで、今年も昨年紹介し忘れていた虫の登場で祝いましょう!
実際は紹介し忘れていたというより、紹介できなかったのです。
名前を知らない昆虫でしたから。
その虫はこれ(↓)

20120305.JPG

マツヘリカメムシといいます。
昨年10月28日、東京都西多摩郡日の出町の研究所の玄関で発見し、
細身で模様が綺麗なカメムシなので撮影したものの、ずっと名前がわからなかったのです。
先週、Twitterで問い合わせ、やっとカメムシが得意なフォロアーに教えてもらえました。

名前がわからなかったのも当然といえば当然。
こいつ、新参者なのです。
北米西部原産の外来種のカメムシで、
日本で初めて発見されたのは2008年3月26日、東京都小金井市のようです。
(全然関係ないですが、この日は私の誕生日。縁を感じます。)
それから、東京都を中心に周辺の県などでポツポツと報告例が上がり、
どうやら関東一帯へ広がりつつあるようです。
そして昨年、東京都西多摩郡日の出町にも登場。
おそらく、ここ日の出町での発見は、これが最初のレポートだと思います。

マツ類の新芽や新果に口を挿し吸汁し、寒さにも強く冬でも活動している様子で、
もしかしたら今後、マツに被害が出るのではないかと心配されている種のようです。

とはいえ、彼らに罪はなく必死で生きている訳で、
どう接して行けば良いのかは非常に難しい問題ですね。
本年度は、外来昆虫という難しいテーマでスタートを切りました。

01/20
ウヅキコモリグモ(昨日のクイズの回答)

昨日のブログを見てない方は是非、そちらを先に読んで下さい。
【クイズ】何が写っているでしょう?

みなさん、見つけられましたか?
パッと見ではわかりませんが、真剣に探せば簡単に見つかりますよね。
(すいません、実物大にしようと試行錯誤して少し画質が悪かったかもしれません。)
写っているのはクモです。
正確にはコモリグモの一種。
90%以上の確率でウヅキコモリグモです。
20121120.jpg漢字で書くと卯月子守蜘蛛。
その名の通り、子守をするクモなんです。
卵嚢(らんのう,クモの場合、多量の卵をまとめて糸で包んで保護した塊)を
お尻にずっとくっつけて歩いて守っている姿をよく目撃します。
孵化後もしばらく背中に仔グモを乗せて生活し外敵から守ります。
卯月、すなわち4月頃に成体になるのでこのような名前が付いたようです。
一年中、特に真冬でも普通に活動しているのでこのネーミングは気に食わない私。
但し、さすがに真冬は動きが少し鈍くなります。

草原にはたくさん生息しており巣を張らない徘徊性のクモです。
体長は1 cm程度、足を広げると2 cm位で茶色からこげ茶色の地味なクモです。
畑にもたくさんいて、害虫を退治してくれる益虫ですから仲良く付き合っています。

これ、たぶんヒシバッタを狙っていた瞬間だと思いますが、私の撮影後にバッタがピョン。
たぶん私のせいです。すんません。

春には子守をしている姿を紹介しますかね!

【捕獲時満足感:2】(10点満点)
但し、卵嚢を抱えていると5
子供が背中に乗っていると9(私は1度しか見たことがありません)。

01/19
【クイズ】何が写っているでしょう?

201201194.JPG何がいますか?

正解は、一昨日と同じくヒシバッタです。
簡単ですね!
一昨日、初めてヒシバッタの存在を知った方も、
今日は瞬時に見つけられたのではないでしょうか?
ちょっと隠れ方が下手なのかもしれませんが、
皆さんの眼(脳)が一昨日ヒシバッタを確認・認識し、記憶したことも重要な要因だと思います。

もう一度、漠然のこの写真全体を眺めて下さい。
それなりに見事に周囲の枯草に紛れていませんか?
それに、一昨日の乾いた土の上の個体より、少し赤茶色のような気もしますし巧妙です。
簡単に見つけられたのは皆さんの眼がヒシバッタを経験したからです。
初めてなら、簡単ではなかったはずです。

このブログを書き始めてから、
「なんで、あんなに色々な虫を見つけられるの?」
と時々言われますが、
このように虫を探しては周囲の環境(棲息環境)と共に脳にインプットし、
「虫を見る眼」(略して虫眼,ムシメ)が鍛えられているからだと思います。

さて、ここからが本題です。ヒシバッタで満足していてはいけません。
もう1匹違うものがいますよね!
気付きましたか?
既に気付いていた方は「虫眼」が鍛えられていると思います。
意外と簡単に見つかりますから、探してみて下さい。

正解は明日です。

01/17
ヒシバッタ

さーて、今年一発目の虫ブログは、真冬でも活動しているヒシバッタから始めましょう。
これは、先週畑で撮影したものです。
201201171.JPG何処にいるかわかりますか?

その名の通り、背中が菱形だからこんな名前がついています。
深い草むらより、草が少なめで地表がむき出しになっているような環境に多いです。
体長は1cm前後ですね。0.8 cm~1.3 cm位でしょうか。
小さなバッタで、全国何処にでもいます。
草原を探せば大概見つけられますが、虫に興味ない人は小さいので
気付いたこともないかもしれません。
体、特に背中の模様、は生息環境により色々変化があります。
これは乾いた畑の土の上に棲んでいたので、明るい土色していますが、
もっと湿気な場所なら土の色に合わせて黒っぽい色をしています。
ただ、形は皆一緒で、菱形です。
でも、この菱形にたたまれた翅は見せ掛けで、羽ばたいて飛ぶことはありません。

太い足からわかるようにジャンプ力は結構凄いです。
40~50 cmは軽く跳ぶんじゃないですかね。
「それだけ?」と思われるかもしれませんが、体長1 cmですし、体の割には凄いです。
保護色もあり、ジャンプ前後も殆ど動かないでじっとしているので、結構見失います。
でも、見失ってもすぐ見つけられます。
着地した付近を手や足で触れば再び、ピョーンと再び跳びますので。

【捕獲時満足感:3】(10点満点)

もしかしたら見つからないって方がいるかもしれないので、印をつけました。
赤い丸の中です。
201201172.jpg

12/22
えっ、結婚!!!!!!!???????

昨晩は職場の忘年会でした。
本当なら、ウィルス性腸炎後、初めての飲み会だったので、
大丈夫であったことを面白おかしく報告する予定でした。

ですが、突然、職場内での予想外の結婚の発表があり予定変更。
衝撃で忘年会は大混乱。
しかも、「美女と野獣」のペア。
いや、野獣に失礼、「美女とへなちょこゴリラ」という表現が正しいでしょうか。
2年半付き合っていて、周囲に全く気付かれていなかった点は天晴であります。

もし、ウィルス性腸炎が完治していない状態で参加していたら、
その衝撃で私はウンコをちびっていたことでしょう。

昨日散々いじったので、今日は私から祝福の『ハート』をプレゼント。
20111222.JPG
アキアカネの交尾ですが、ハート型になっているでしょう。
上側がオス、下側がメスです。
トンボの交尾は解説が大変なのでお蔵入りしていたのですが、説明しましょう。

トンボの交尾器も他の多くの昆虫同様、腹部(しっぽ)の先にあります。
しかし、オスはこの部分は特種な鈎状になっており、これでメスの首をはさみ固定します。
その結果、連結状態になり、この状態で飛んでいるのを見たことがある方も多いでしょう。
しかしこれは交尾ではなく結婚飛行。新婚旅行みたいなものです。
交尾はこの後です。
オスは自分の交尾器がメスの固定で使えないので、尾の付け根にもうひとつの副交尾器(専門的には貯精嚢という)を持ち、ここにあらかじめ尾端の精子を移しておきます。
そして、首をつかまれたメスがしっぽを曲げて、これに自分の交尾器を接触させるのです。
この時にハート形になるトンボが多く、多くの方を魅了するのです。

【捕獲時満足感:3】(10点満点) 捕まえやすいトンボなので。この写真は満足の7点。

危うく、このブログがへなちょこゴリラの結婚ネタに乗っ取られそうになりましたが、
虫ネタで体裁を保ちました。

12/16
まだ活動中の虫

寒いです。
先週はこちらでも雪が降ったことを報告しましたが、
いよいよ冬本番ですね。

もう活発に活動している虫はいないと思っている方、
そんなことはありませんよー。
活動していても土の中だろうと思われている方、いいえ違います。

先日、「なかなか食卓までの道は厳しい...」
紹介したオータムポエムの花には、
12月でも晴れた暖かい日中には蜜や花粉を求めて、
虫たちが飛んできます。


201112161.JPG

ツマグロキンバエとミツバチのツーショット写真です。
特にミツバチは数が多いです。
働き者ですなー。

寒さのため、既にオータムポエムは茎が伸びず、
野菜としての価値はなくなっています。
しかし、虫たちのために一部は引っこ抜かずに残してあります。
殆ど花がない環境下、
私の畑の一角には花が残っているので皆集まってくるのかもしれません。

ちなみに、ツマグロキンバエはハエのくせにウンコより花の方を好みます。

201112162.JPG


花の蜜を舐めるために進化したと考えられる長い口と、複眼の横縞模様が特徴です。
変なメガネ見たいでしょ。

12/06
ジョロウグモ

東京都西多摩郡の気候だと、12月初旬でもまだ健在なのがジョロウグモです。
晩秋を中心に、街路樹や電線などを利用して、巨大な巣を張っている大きなクモで、
殆どの方が見たことあると思います。
この敷地の周囲にもたくさんいます。
201112061.JPG

雌の体長は2-3 cm、足を入れると5-6 cmにもなります。
一方、♂はその半分にも満たないサイズで、同じ巣の隅っこにそっと身を寄せていることが多いのですが、気が付かない方も多いと思います。

秋も深まり産卵が近づくと、腹が膨らむと同時に非常にカラフルになり、
黄色ベースに黒、青、そして腹の裏側には紅色の部分が出てきます。
クモ嫌いにはたまらなく気持ち悪い毒々しさでしょうが、
よく見ると綺麗ですよ。
せっかくなので腹側もどうぞ。
201112062.JPG

国内で巣を張るタイプの大きなクモは、このジョロウグモと以前に紹介したコガネグモ
の2種類です。
並べると明らかに模様は違いますが、もっと楽に識別するには、
ジョロウグモは晩秋で巣は樹木の上、
コガネグモは夏で巣は草原の中
と覚えておけば簡単です。
ジョロウグモの巣には、ギザギザ模様の隠れ帯がありません。
また、ジョロウグモの巣は食べかすや糞のようなものが放置されていることが多く、
掃除嫌いのようです。
上の写真にもゴミが写ってますよね。

この腹、柔らかくプニョプニョしてて触ると気持ちがいいんですよ!

11/29
例外もありますよ(ミヤマフキバッタ)

昨日、
「殆どの不完全変態(蛹にならない)の昆虫の成虫と幼虫の見分け方は、翅があるかないかで区別すれば間違いません。ゴキブリもそうです。」
と書きましたが、例外もあります。
ブログにするタイミングを逃していましたので、本日紹介します。

201111291.JPG

このミヤマフキバッタと思えるフキバッタの仲間もその一つです。
標高の高い所に棲んでいる翅が退化しているバッタです。
これは東京の西の方にある御岳(みたけ)山で9月末に撮影したもので、時期的にも成虫に間違いありませんが、翅は小さい茶色のものがちょこっとついている程度です。
これで立派な大人です。

このバッタ、標高の高い山に棲息していて、それに加えて翅が無いので移動範囲が狭いため、地域によって少しずつ遺伝的な特徴が出てきて、種の分化が進んでいます。
そのため分類学的にたくさんの種類に分けられており、専門家でも種の識別が困難で、
きっちり名前が言えない位難しいのです。
私には、ミヤマフキバッタの一種としか言えません。
実は、一昨年、東北の標高の高い山に棲息しているハヤチネフキバッタを山形県の月山で見つけた時にブログにしていますので、ご参照下さい。

この2種類のバッタは、「昔からの親戚だけど、翅が短くなって移動も大変なので会いに行けなくなり、ずーっと何百、何千世代も交流が無く、今では親戚とは言えなくなった」
というイメージでしょうかね。

【捕獲時満足感:9】(10点満点) 私にとっては極めて珍しいバッタです。

余談ですが、
このバッタを発見した御岳山の御岳神社には、毎年、協乳研究所でお祓いに行っているのですが、今年はアメリカ出張と重なり行けませんでした。
信心深い私はとても不安になり、9月末に個人的にお参りに行ったのですが、
台風の爪痕が、凄かったです。でも、このおかげでバッタに出会えましたが...。


201111292.JPG

           
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16