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メイトー
協同乳業研究所

10/06
ノーベル賞のおかげ

ノーベル賞週間の月曜日。

私はシンポジウムのため到着したばかりの金沢で、
講演者達と会食形式で昼食をとっていた。


「日本人、また獲りそうですね」という高尚な話題があった。
「腸内細菌で獲るとしたらジェフリー・ゴードンだよね」
というような会話をしていた。

どうやらゴードン博士も候補には上がっているらしく、服部正平先生は、「彼がとったらインタビュー受けることになっている」と語られていた。
国内のマスコミは、日本人研究者が受賞した時だけ騒ぐものと思っていたが、
海外の研究者が獲得しても、準備はしているようである。
おそらく、日本人受賞で騒ぐのは科学担当以外の部署なのだろう。
科学担当記者は、世界中の誰が獲っても、その業績を紹介する準備はしているようである。


会話の中で、「うちは大隅先生がいますから」と話していたのは東京工業大の准教授。
一応、大学として受賞された時用に、広報の準備はしてあるというようなお話だったと記憶している。


6時間後、その大隅良典先生が受賞されていたニュースを見た時は、
さすがに、びっくり、たまげた。


さて、この受賞で、何の関係もないのに得をした人物がいる。


私自身である。


大隅先生の研究対象である「オートファジー」という生命現象が、私の研究にも関わってくるからである。
私が着目しているポリアミンという物質が、このオートファジーを誘導する。
寿命伸長効果や学習記憶力の低下抑制に、オートファジーが関与していることが解明されてきているからだ。

従って、私は全ての講演で、必ず1回か2回は「オートファジー」という単語を話す。
スライドにも載せてある。
プロ(研究者)相手であろうが、素人(一般の方)相手であろうが、必ず使う。

「腸内でポリアミンを増やせばアンチエイジングに繋がります。」
と話す私にとっては、オートファジーは切っても切れない生命現象なのである。

例えば、私の論文の1ページ目のイントロにも、このようにautophagyという単語は登場するくらい重要なのである。

20161006.jpg
Sci. Rep. 4: 4548, 2014


しかし、分野外、ましてや一般の方々に「オートファジー」は浸透していない。
そのため、わかってもらおうと頑張って説明してきた。

限られた時間の中、本題ではないが1分間程解説していた時期もある。
スライドを1枚用意したこともある。

でも、理解を得ているという手応えは、限りなくゼロに近かった。
(私の説明が下手という可能性はもちろん否定しないが...)

講演において、聴衆の興味が離れてしまうファクターは、排除しなくてはならない(持論)。
いつしか、「オートファジー(自食作用)」とだけスライドに示し、
「ややこしいんで説明は省きます。要するに、細胞内のゴミを自分で食べて処理すること」
とだけ話す作戦がベストであるという結論に達していた。


それが、このノーベル賞受賞のニュースで大きく変わろうとしている。


早速、昨日試してみた。


「一昨日の大隅先生のノーベル賞のオートファジーです。」
と話すだけで、昨日の聴衆の大半は、私が経験したことないレベルで大きく頭を縦に振っていた。
もちろん、現象自体は殆ど理解していないはずである。


でも、話している内容を聴こうという姿勢は明らかに上昇した。


劇的な効果である!

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