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LKM512
メイトー
協同乳業研究所

01/06
未年です。我々の研究でヒツジと言えば...

私は農学部出身なのでヒツジの毛刈りはもちろん、去勢も体験したこともあるので、一般の方よりヒツジを身近に感じております。
しかしながら、畜産微生物学の研究室に入ってからは直接研究として触れ合う機会はありません。

乳業繋がりではロックフォールチーズ(恐怖を感じるレベルで青かびが生えているやつ)に代表される羊乳チーズもありますが、私の研究とは関係ありません。

我々が関わっているものとしては昨年の馬の血液と同様に
(参照ブログ⇒午年です。我々の研究でウマと言えば・・・
緬羊脱繊維血液が存在します。
これも、微生物を生育させる培地に添加するのですが、
あの有名なピロリ菌を培養する時などに使用します。
不思議なことに馬の血液では生育が良くないのです。
昨年とウマ血液と似たりよったりなので、今日は別の物を紹介します。

抗体です。
体の中で病原菌や異物と戦うために免疫細胞が産生するあの抗体です。
例えば、予防接種は予め無毒化あるいは減弱化した病原体を注入して、
体でその病原体に対する抗体を作らせる行為です。
抗体の説明として『鍵と鍵穴』と表現されますが、
厳密に特定のタンパク質のみを認識して接着するのです。

我々はこの性質を利用して、生体の特定の物質のみを検出する時に抗体を使います。
例えば、血液や尿や糞便の中の炎症に絡む成分Aを定量する時に。
例えば、腸組織のガン化を示すマーカーBを発現している細胞を検出する時に。

残念ながら抗体は人工的に作れませんので動物に頼るしかありません。
そのために動物に成分Aを注射して、
成分Aに対する抗体(抗A抗体)を作らせます。
実は、マウス、ラット、ウサギの他にヒツジも抗体を作る動物として重宝されているのです!
マウスやウサギより大量に採血できるので(抗体は血液から精製する)、
多くの研究者が対象としている物質の抗体を作る場合は小動物より効率的なのです。

下の図は、抗体販売の大手代理店コスモバイオの抗体検索ページです。
2016010601.png
我々が時々測定するTNFという炎症に関与している物質に対する抗体(抗TNF抗体)を検索してみました。
取り扱っている世界中のメーカーが販売している何百という抗TNF抗体がリストアップされて来ます。
更に免疫動物をヒツジ(Sheep)として絞り込み検索をかけたのが上の画面です(写真は一部の拡大)。
つまり、これ全部がヒツジで作られた抗TNF抗体のリストです。

例えば、一番上、
Anti TNF α, Human (Sheep)
とあります。
(見難くてすいません)

これは、
「ヒトのTNF αに反応する抗体(ヒツジ体内で作ったもの)
(右側には)500µgで64,400円、在庫は無いけど1週間で届けられます。」
という意味です。

ヒトのTNF αをヒツジに複数回注射しこれに対する抗体を体内で作らせて、
採血して精製したものが売られているのです。

本題からずれますが、一番下の抗体は0.5 mgで40万円ってのがわかりますか?
精製度や力価等で値段が変わるのです。
研究ってお金がかかるでしょう。

あらゆる成分の抗体が存在しますので、
相当数のヒツジが抗体産生のために活躍している事だと思います。

今年は、未年にちなんで、ヒツジ抗体キャンペーンとかしてくれないかな?
そんな洒落の効いたメーカーや代理店は存在しないか...。
そもそも製造元の多くは海外メーカーやし...。

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