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LKM512
メイトー
協同乳業研究所

03/27
腸内常在菌が脳の代謝系に与える影響 ―差があった編―

今、読み直すと、この論文、なかなかの大作です。
軽く結果を紹介しようと思いましたが、図だけで8つもあるではないですか。
でも、ブログで長々と説明するわけにいかないので、
無菌マウスと通常菌叢マウス(参照ブログ:腸内常在菌が脳の代謝系に与える影響 ―実験方法編―)に差があったことのみ今日は紹介します。

通常、生物の体は一定の状態を保とうとします。
最もわかり易い例をあげると体温のように。
これを恒常性あるいはホメオスタシスといいます。
意識していませんが、生物は恒常性にて様々な環境変化に対応しているのです。
特に、ヒトにとっての脳は最も大事な器官と言っても過言ではないでしょうから、
厳密に恒常性は維持されています。

「ウンコ博士、脳は分析しても差はでませんよ。お金の無駄遣いですよ。脳をやるなら筋肉や他の臓器の方が絶対良いです。」
と言ったのは、先日紹介したHMT社の研究員やスタッフ。(1/31 ちょっと出演しています
彼らは経験上、ちょっとやそっとの刺激(食物や薬物)では、メタボロミクスで感知できるレベルで脳の代謝系が動くことは無いことを知っていたのです。
今でこそ、腸内細菌と脳の関係は注目され始めていますが、
この実験を行った2009年時点では、良い結果(明確な差が出る)が得られる可能性は低いと考えるのが当たり前でした。

私「どんな結果になっても良いからやる。ウンコ菌をなめたらあかん」

数か月後、見事に差がある結果が得られました。
なんと、大脳皮質中から検出された196成分の内、38成分で統計学的に有意な差があったのです。
その中の約10種類の成分は、既に脳の疾病や機能との関係が報告されているものでした。
例えば、神経伝達物質やその前駆体になる芳香族アミノ酸
統合失調症との関連性が報告されているセリン
多発硬化症やアルツハイマーとの関連性が指摘されているN-アセチルアスパラギン酸
てんかんとの関連性が示唆されているピペコリン酸
行動や動機づけに関連する神経伝達物質ドーパミン

つまり、脳の疾病や機能に関連する物質が、腸内細菌が棲息しているか否かで脳内での濃度が違っていたということです。

マウスと腸内細菌のおかげで、
HMT社の研究員をギャフンと言わせることができました。

つづく

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