08/13
穴の中の生物② ―出会い編―

昨日の写真ではわからないが、
ハンミョウの幼虫は、巣穴の外から見える頭部の下はコガネムシの幼虫の様なイモムシ系の肉体である。
もし巣穴を横から観察できるとしたら、
体の割に大きめの頭部を持ったイモムシが、
垂直に地中に伸びた竪穴に立っているような態勢である。

しかも、背中にフックのような突起が付いていて、地上に引っ張られる力が働いても、
簡単には巣から引き抜かれないような体形をしている。
この知識は図鑑から得たもので、私は本物を見たことが無い。
図鑑でも見られたことが無い多くの方には、文字で説明しても理解が難しいはずである。

従って、発見後、何度も私はこいつを吊り出そうと畑作業をそっちのけで夢中になった。
地面に屈んで枯草等を巣穴にそっと刺して、
幼虫がそれを押し上げた所を吊り上げようと挑戦するが、結局できずじまい。
(一応、「ハンミョウ釣り」という言葉はあり、この方法での成功例を稀に聞く。)

困った私は、共同研究者のシン君に仲介してもらい、
ハンミョウ分類の専門家の一人である京都大学の芦田久准教授(当時,現近畿大学教授)にメールし、どうやって釣り出したら良いか質問をした。
先生は朝日放送『探偵ナイトスクープ』でハンミョウ釣りネタの時にも登場されており、私はたまたま実家に帰った際にその放送を見ていたのである。
先生の本業は「糖鎖を介した微生物と生体の関わり」に関する研究なのであるが、
趣味の昆虫分類(新種発見)でも論文を多数出しておられる。

しかしながら、連絡をすると先生はその番組撮影中には釣れなかったらしい。
「あれ、かなり難しいですよ。ただ、この穴がハンミョウであることは間違いないです。」
という回答。

後々、この関係が共同研究に発展するのだから不思議な縁である。
京都大学とLKM512でキーワード検索してみて頂きたい。
2011年のビフィズス菌寿命伸長のニュースが沢山出てくるはずである。
参照:プレスリリース

この研究の一部のデータ作りを助けて頂いて論文にすることができたのであるが、
まさか、先生と私のファーストコンタクトが「ハンミョウの幼虫」だった事は誰も想像できないであろう。

芦田先生が探偵ナイトスクープで最終的に成功された方法は、
穴の入り口に顔を出した瞬間にスコップで掘り起こす作戦だったということで、やってみた。
しかしながら、散々やってみるも失敗の連続。

正直、大の大人が、地面に屈んでジーッと穴を見つめ、
突然、スコップで掘り起こす姿は異様だったことであろう。

ハンミョウの幼虫の巣は深さ30 cm程度はあるようで、
硬い地盤では一撃で掘り起こせるのはせいぜい深さ20 cm位が限界で困難である。
振動を敏感に感じ、しかも動きが素早いようで全く掘り出せない。
そうこうしている内に、2年の月日が経った。

つづく