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LKM512
メイトー
協同乳業研究所

02/16
先日発表した論文(Scientific Reports)解説します⑧ ―結果と考察つづき、大腸の中のアミノ酸―

昨日までのように、無菌マウスと通常菌叢マウスの腸内代謝産物を比較し分類すると、
腸内常在菌が何をやっているのかを知る第一歩になるのですが、
「これまでの知見と違うじゃないか」、あるいは、
「その通りだな」ということが色々見つかりました。

わかり易い例を1つだけ挙げましょう。
誰もが知ってるアミノ酸!
小学生か中学生か高校生の頃(20~30年前)、
食事由来のタンパク質は酵素で消化されアミノ酸になり小腸で吸収され、
ウンコに出るのはゴミと習いました。
だから、ウンコにはあまりアミノ酸が無いと思っていたのですが、たっぷり検出されました。
たっぷりというのは、餌に含まれている量より増えていたということです。
簡単に言うと、餌に含まれたタンパク質は消化されアミノ酸になり、
結構な量が吸収されずにウンコになって排泄されているということです。
さてさて、栄養失調ならともかく、十分なタンパク質を摂っている日本人にとって、
アミノ酸サプリメントなんて意味があるのでしょうかね?
これ以上書くと怒られそうなのでストップ。

一方、大学の授業(15~20年前)では、
生体の酵素では消化しきれないタンパク質(あるいはタンパク質が少し分解されたペプチド)は
腸内常在菌によりアミノ酸まで分解され生体の栄養になる、
つまり、「我々は腸内常在菌と持ちつ持たれつ共生しているんだ」、とも習いました。
実は、若く希望に満ち溢れていた私は、こういう講義を受けて「微生物って凄い!」と思い、
そういう専攻に進んだのです。
が、殆どのアミノ酸濃度(検出できた19種の基本アミノ酸のうち15種)は、
無菌マウスと通常菌叢マウスに差がありませんでした。
しかも、残りの4種のアミノ酸は無菌マウスの方が多かったです。
ガーン、驚愕の事実 (ОдО∥)
要するに、消化不十分のタンパク質を腸内常在菌がガンガン分解して
アミノ酸を作っているという事実はおそらく無いということがわかりました。
「おそらく」と書いたのは、肉食動物の腸内常在菌ならあり得るような気がするからです。
無菌ライオンを作ってみたい衝動発生。

一方で、消化され吸収されず大腸に到達したアミノ酸は
腸内常在菌が窒素源(タンパク質系の栄養源)として利用して、
自分達の増殖に使っているということも色々報告されています。
しかし、殆どのアミノ酸が無菌マウスと通常菌叢マウスで差が無いことを考えると、
腸内常在菌がアミノ酸をガンガン使っているとは思えず、これもまた怪しい。
そういう腸内常在菌がいるのは否定しませんが、
腸内常在菌の大部分がそうであるという解釈は間違っているのでしょうね。

アミノ酸だけでもこれだけ混乱してしまったのでした。

ちなみに、このデータは論文の図3にあります。
緑が餌の成分が吸収されずにウンコになった時
(水分や消化液の影響を計算して補正)の濃度、
うす紫は無菌マウスウンコ、赤は通常菌叢マウスウンコの濃度です。

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