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メイトー
協同乳業研究所

02/24
牛乳でおなかゴロゴロ(後半)

乳糖(ラクトース)は、胃では殆ど分解されず小腸に到達しますが、そのままでは吸収されません。
小腸の上皮細胞中に存在するラクターゼ(専門用語ではβ-ガラクトシダーゼ)という酵素により、グルコース(ブドウ糖)とガラクトース(良い日本語訳がない)という糖に分解されて、やっと栄養素として吸収されます。
ラクターゼを意訳すると、乳糖分解酵素ということになります。

このラクターゼ活性が低下あるいは欠損すると、
乳糖が腸管内に溜まり、浸透圧を上げて水分の吸収を妨げたり、腸壁を刺激し蠕動運動を活発にしたりするため、お腹がゴロゴロなったり、下痢になったりするのです。
また、大腸まで到達すると、腸内細菌が乳糖を分解し、酸やガスが産生され、同様の現象が増幅されるのです。

つまり、牛乳を飲んでおなかがゴロゴロするのは、このラクターゼがきっちり働いているか否かに左右されるのです。
働いていない状態を、乳糖不耐症、ラクターゼ欠損症、あるいは低ラクターゼ症と言います。
お腹がゴロゴロする人のために開発された市販牛乳もありますが、これはラクトースが予め酵素で分解された牛乳です。

面白いことに、赤ちゃんの時は、このラクターゼ活性が高いのですが、離乳し、乳を摂取する機会が減ると、徐々に活性が低下するようです。
ですから、ゴロゴロするのは子供(給食でも飲んでいる)より大人が多いのです。
数千年間、何世代にも渡り酪農文化のもと生活してきた欧米人は、遺伝的に大人になってもラクターゼ活性が高いようですが、日本人は遺伝的に低ラクターゼ症の人が多いようです。

最後に、私の経験談を述べます。
会社から理化学研究所に派遣されていた私は、1年3か月間、牛乳を飲みませんでした。
会社では福利厚生で1日1本(200ml)の牛乳を無料で飲めたので、購入するのが嫌だったのです。
「せこーっ」と言われそうですが、はい、その通りです。
1年3か月振りに会社に戻り牛乳を飲んだ私を襲ったのは、強烈な下痢でした。
最初は気が付かなかったのですが、連日、午後1時半頃に症状が出ます。
牛乳を飲んだ30分後です。
そうです。1年3ヶ月間、乳糖を摂取しなかったので、完全にラクターゼが作れない体、すなわち乳糖を分解できない体になってしまったのです。
しかし、ヒトの体は凄いです。
1週間もすると、徐々に下痢は軽減され、1ヶ月後には、何ともなくなりました。
再び小腸の上皮細胞がラクターゼを産生し始めたと思われます。

以上、なぜ牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロするか、わかって頂けましたか?
暫く我慢して飲み続けると、治るかもしれませんよ。

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