02/05
花粉症2

関係者はうすうす感じているでしょうが、
実は私、「ヒトを使った花粉症への効果判定試験」に関しては、非常に消極的なのです。

商売にも繋がるし、注目されているのに何故か?
それは、実験の組み立てが極めて難しいからです。

食品に限らず医薬品でも、臨床的な効果判定にはプラセボというものを使います。
プラセボとは、日本語では「偽薬」と訳されていますが、
有効成分が入っていない、見た目や味などが全く同じものです。
私の実験の場合は、
普通のヨーグルトにLKM512を添加したものを「LKM512ヨーグルト」として試験をするのですが、
LKM512を入れずに作ったヨーグルト、いわゆる「普通のヨーグルト」がプラセボとなります。
色、味、香り、量、乳酸菌の数まで同じです。
違うのは有効成分LKM512が入っているか、入っていないかということだけです。
作った人にしかわかりません。
これらを患者さんに食べてもらって比較するのです。

なぜ、こんな面倒なことをするかというと、プラセボ効果を避けるためです。
プラセボ効果とは、心理的な影響で、
薬理成分が入っていなくても薬と思うことで効いてしまう現象のことです。
これは科学的に証明されている現象です。
つまり、ヨーグルトを食べるだけで、ヨーグルトが花粉症に効くと信じていれば、
その気持ちだけで花粉症が軽減されることがあるということです。
ですから、プラセボ(普通のヨーグルト)を食べた時と比較して、
LKM512ヨーグルトを食べた時にプラセボ以上の有効性が認められるか否かを比較する必要があるのです。

では、私が試験参加者を2つのグループに分けて
Aグループ:プラセボ
Bグループ:LKM512ヨーグルト
それぞれ1ヶ月食べてもらう
という試験計画で良いのかというと、これも正確な試験ではありません。

つまり、私(試験者)が
「この人プラセボやから、効くわけない」
と思い込んでデータを取ることによるリスクを回避しないといけません。
そこで、試験者も被験者(患者)もプラセボなのかLKM512ヨーグルトなのかをわからなくして実施しなければなりません。
そこで、試験者と被験者の間に第三者が登場し、これらを調整してくれるのです。
専門的にはこの試験方法を二重盲検法あるいはダブルブラインド法といいます。

第三者の登場は、身内で試験を行なう場合、極めて有効な手段です。
私にウンコを渡すとなると抵抗感があるようですが、
私が個人名を把握できないとなると、参加者が増えるのです。
私はちょっと楽しみが減って残念ですが・・・。

まだややこしいことがあります。
今日のブログは息抜きどころではなくなってきました。

よりデータのばらつきを少なく正確なデータを得るためには、Aグループにも、Bグループにも、
プラセボとLKM512ヨーグルトを食べてもらい比較するのが好ましいです。
つまり、
Aグループ:プラセボ →休止期 →LKM512
Bグループ:LKM512 →休止期 →プラセボ
とするのです。
休止期は、それまで食べていたヨーグルトの影響を無くすため、
1ヶ月ほどの期間食べない期間です。
この試験方法を交差試験あるいはクロスオーバー試験といいます。
すなわち、先の、二重盲検と合体させ、
「二重盲検クロスオーバー試験」が食品成分などの機能性を試験するには理想的なのです。

さて、やっと花粉症の試験に戻りますが、
スギ花粉が飛散するのは東京では1月末から3月の間ですが、
最盛期は2月中旬から3月中旬くらいでしょう。
たった1ヶ月しかありません。
この短期間に、プラセボとLKM512の投与、
さらにこれらの間に休止期を挟んで実施することは時間的にできないのです。
短過ぎるのです。
前半は花粉が多かったけど、後半は少なかったなんてこともあるでしょう。
2年間に渡り実施することも考えました。
1年目にプラセボを食べた被験者の2年目はLKM512という形です。
しかし、毎年花粉の量に差があります。
私が調べた限り、2年連続同じ量の花粉ということはないようです。
スギも生き物ですから、前年の天候やらに花粉量が著しく左右されるようですね。
前年に気候の問題で少なかったら、次の年爆発的に飛散することも多いようです。
「例年の10倍の花粉が飛ぶ」
なんていう予報が出る年もある位です。

10倍も飛んでいると聞いたら、それだけで花粉症の人は鼻がムズムズするでしょう。
これって、逆プラセボ効果(?)と言ってもよいかもしれません。

とにかく、異なる環境で試験しても意味がないので、これも不可ということです。

さらに、LKM512の効果を調べるわけですから、
被験者の方には、薬の使用を制限して頂かなくてはなりません。
これは、多大な苦痛となるでしょう。
また、マスクやゴーグルなども参加者全てで同じものを使わなければならないでしょう。
数年前、当社研究所内で小規模でトライをしたことがあるのですが、
「参加してもいいけど、プラセボだったらやらない」
というようなことを各人が個人的に言ってくるものですから、どうすることもできません。

ということで、これらが、私が花粉症患者へのLKM512投与試験に消極的な理由です。
とにかく、きれいな実験系を確立するのが限りなく不可能に近いのです。

もう疲れたので、続きは次回。